骨粗鬆症治療のゴールは、骨密度の低下を抑え、骨折を防ぐことにあります。
治療の中心は薬物治療です。薬物治療には、飲み薬と注射薬の2種類があります。
薬物治療と同じくらい重要なものは、食事や運動の生活習慣です。
食事療法や運動療法を並行して行うことが大切です。
骨粗鬆症の薬は大きく2つに分類されます。
骨吸収が緩やかになると、骨形成が追い付いて新しい骨が吸収されてしまった
部位に嵌め込まれ新しい骨が出来上がります。
女性ホルモン製剤(エストロゲン)、ビスフォスネート製剤、SERM、
デノスマブ 等
骨吸収を抑える薬のほうが主流ですが、こちらもよく処方されます。
活性型ビタミンD3製剤、テリパラチド
最近どちらの効果も持った新しい薬剤(ロモソズマブ)も登場しています。
※青字は注射剤です
女性ホルモンの減少に起因した骨粗鬆症に有効
破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑えます。非常によく用いられる薬剤です。
骨に関しては女性ホルモンと似た作用で骨密度を上昇させますが、
骨以外の臓器には影響を与えません。
破骨細胞に関わる蛋白質(RANKL)に作用して骨吸収を抑制します。
ヶ月に一度の皮下注射です。
食事で摂取したカルシウムの吸収を促進します。
大きな副作用もなく、よく用いられます。
新しい骨を作る骨芽細胞を活性化させ、骨強度を高めます。
骨折リスクが高い患者さんに適した注射剤です。
ARONJ(Anti-Resorptive agents-related OsteoNecrosis of the Jaw)
SERM以外の骨吸収抑制剤を内服している方の数万人に一人、
顎の骨が部分的に死んでしまう骨壊死を引き起こすことがあります。
顎骨の構成は特殊です。歯が顎骨に刺さっていて、歯茎で覆われているだけなので、骨までの距離が近く、歯がグラグラする高齢者や口腔内ケアをしっかりできない方は、緩んだ歯から感染を起こしやすくなり、そこから骨壊死が始まると考えられています。
抜歯の予定がある、またはグラグラしている歯がある方は、ご相談ください。
SERMは骨粗鬆症ガイドラインではかなりお勧めの薬です。
選択的エストロゲン受容体モジュレーターなので、ほぼ骨に対してしか
作用しません。
副作用は深部静脈血栓症(DVT)で、下腿の静脈に血栓ができ、最悪、心筋梗塞や
肺梗塞を引き起こします。起こる頻度は0.2%です。
テリパラチドの副作用は、骨肉腫発生リスクが上がることです。よって、
発生しないよう注射できる期間が、一生のうちに2年間と決まっています。
分類 | 薬物名 | 骨密度 | 椎体骨折 | 非椎体骨折 | 大腿骨近位部骨折 | 代表的な薬剤 |
活性型ビタミンD₃薬 | エルデカルシトール | A | A | B | C | エディロール |
ビスホスホネート薬 | エチドロン酸 | A | B | C | C | ダイドロネル |
アレンドロン酸 | A | A | A | A | フォサマック、ボナロン | |
リセドロン酸 | A | A | A | A | ベネット、アクトネル | |
ミノドロン酸 | A | A | C | C | リカルボン、ボノテオ | |
SERM | ラロキシフェン | A | A | B | C | エビスタ |
バゼドキシフェン | A | A | B | C | ビビアント | |
副甲状腺ホルモン薬 | テリパラチド(遺伝子組換え) | A | A | A | C | フォルテオ |
テリパラチド酢酸塩 | A | A | C | C | テリボン | |
抗RANKL抗体薬 | デノスマブ | A | A | A | A | プラリア |
薬剤評価一覧
※青字は注射剤です